Transaction Scheme & Cases

取引スキームや進出事例

H-46. NBFCライセンス取得に基づく金融取引

インドお役立ち情報:NBFCライセンス取得に基づく金融取引

(文責:吉盛真一郎 / Global Japan AAP Consulting Pvt. Ltd.)

1.NBFCの種類

インドのノンバンク金融会社(Non-Banking Financial Company: NBFC) は、インド会社法 (The Company Act, 1956) に規定されている、貸付・事業買収・株式・債券・社債・その他証券業務等を行う会社(但しその主要な事業が、農業・工業・株式以外の物品の売買・役務の提供・不動産関係である場合を除く)であり、インド準備銀行(Reserve Bank of India: RBI) によってライセンスが発行される10業種に加え、その他インド証券取引委員会 (The Securities and Exchange Board of India: SEBI) 、保険規制開発庁 (The Insurance Regulatory and Development Authority: IRDA)、インド企業省(Ministry of Corporate Affairs)、全国住宅銀行(National Housing Bank)、または各州政府のそれぞれルールによって規定される9業種があり、これらはRBI法 (The RBI Act, 1934) の適用が免除されています。

RBIよりライセンスを取得するNBFCには、預金取扱型と非預金取扱型があり、さらに後者は総資産額が50億ルピー以上の経済的影響度の高いNBFC (Systemically Important NBFCs: NBFC-NDSI)とそれ以外 (NBFC-ND)に分類されています。業種による区分は以下の10種類となります。

  1.  資産担保金融会社 (Asset Finance Company: AFC)
  2. 投資会社 (Investment Company: IC)
  3. 貸付会社 (Loan Company: LC)
  4. 社会基盤金融会社 (Infrastructure Finance Company: IFC)
  5. 重点投資会社 (Systemically Important Core Investment Company: CIC-ND-SI)
  6. 社会基盤ファンド (Infrastructure Debt Fund: IDF)
  7. マイクロファイナンス機関 (Non-Banking Financial Company- Micro Finance Institution: NBFC- MFI)
  8. 債権買収会社 (Non-Banking Financial Company- Factors: NBFC- Factors)
  9. 抵当保証会社 (Mortgage Guarantee Company: MGC)
  10. 非運用金融会社 (Non-Operative Financial Holding Company : NOFHC)

NBFCは銀行業のライセンスを取得しておらず、要求払い預金(普通預金や当座預金)の取り扱い、支払および決済業務、自己宛の小切手振り出しを行うことができません。またNBFCへの預金者は、預金保証制度や信用保証協会を利用することができません。

 

2. NBFCを取り巻く環境と政府の政策

インド国内には2020年10月現在、約1万社のNBFCが存在し、そのうち総資産50億ルピー以上の経済的影響度の高いNBFC (Systemically Important NBFCs: NBFC-NDSI) は274社であり、大多数は中小規模のNBFCです。

日系NBFCの最近の進出事例としては、クレディセゾンの子会社 Kisetsu Saison Finance Indiaが2019年10月にRBIよりNBFCライセンスを取得し、他のNBFCやフィンテック会社と提携して個人および中小企業向けのデジタルレンディング (手続きの多くをオンライン化した融資)を開始しています。

https://corporate.saisoncard.co.jp/wr_html/news_data/avmqks000000axpv-att/20191010_Release.pdf

2020年の新型コロナ禍により、中小規模NBFCが資金繰りの危機を迎えています。RBIの金融緩和策により、マイクロファイナンス機関 (NBFC- MFI) の融資について、その借り手は2020年3月から8月末までの期間の返済猶予を認められることになりました。しかしながら銀行は、2018年8月の NBFC大手IL& FSの経営破綻以降、信用格付の低いNBFCへの融資には積極的ではなかったことに加え、新型コロナ禍においてもNBFCによる融資返済猶予を認めなかったため、多くの中小規模NBFCの資金繰りは悪化しました。

また、RBIによるさらなる金融緩和策である、現金準備率の引き下げ策、TLTROと呼ばれるレポレート(RBIから銀行へ行う短期貸付の利率) の引き下げ策にもかかわらず、前述したような銀行の消極的な方針により、中小規模NBFCへの融資拡大と資金繰りの改善はなされなかったため、RBIは2020年4月にNBFC救済を目的とした改定策TLTRO2.0を発表し、銀行を通じての2,500 億ルピーの融資(うち10%がマイクロファイナンス機関、15%が総資産50億ルピー以下のNBFC、25%が総資産50億ルピー超500億ルピー以下のNBFCへの融資)を推進しました。

さらに2020年10月には銀行を通じた中小規模NBFCへの臨時融資策 (On-Tap TLTRO Facility) や、NBFCからの借り手の連帯債務枠の拡大策を発表するなど、RBIはインド全国で約6,300万社存在し、かつその過半数が農村地域にある中小・零細企業 (Micro, Small and Medium Enterprises: MSME) に対してNBFCを通じた確実な資金供給策をとることによって、農業・工業・商業の担い手である人々の経済活動の再活性化を見込んでいます。

https://bfsi.eletsonline.com/covid-19-and-liquidity-crunch-how-nbfcs-fighting-the-double-edged-sword/
https://www.statista.com/statistics/718232/india-number-of-msmes-by-type/#:~:text=The%20micro%2C%20small%20and%20medium,urban%20parts%20of%20the%20country.

執筆者紹介About the writter

吉盛 真一郎 | Shinichiro Yoshimori
慶応義塾大学経済学部卒。日本・香港・スリランカ・インドにて、日系企業の経理・財務・総務業務に約14年従事。スリランカにてCSR業務から派生したソーシャルビジネスの起業実績もあり、経営者として管理業務実績を数多く積んでいる。2019年よりバンガロールを中心とした南アジアに強い会計・税務コンサルタントとして日系企業のインド進出を支援している。

取引スキームや進出事例

H-41 : サービスおよび物品の輸入取引(RCM課税と海外送金実務)

H-42 : インドにおけるサービスの輸出取引

H-43 : インドにおける代理人PEと課税リスク

H-44 : 単一ブランドによる小売取引(ユニクロの進出事例)

H-45 : フランチャイズ契約による小売取引(セブンイレブンの進出事例)

H-46. NBFCライセンス取得に基づく金融取引

H-47 : インド国内外における物品販売スキーム事例

H-48 : インドの保税施設および保税制度について