Indian Business with COVID-19

コロナ時代のインド進出戦略

I.49-2インドにおけるリモートマネジメント術(スケジュール管理編)

1. 納期に余裕を持たせる

インドでは余裕を持ったスケジュールを組むことが大切です。インドでは政府からの理不尽な要求の他、脆弱なインフラによる停電や洪水、交通渋滞などの問題も頻発しますので、様々な遅延リスクがあります。

私が経験した中で最も驚いたアクシデントは、2019年1月に突然祝日が変更になったことでした。当初は1月15日(火)から17日(木)までの3連休だったのですが、1月11日(金)の夕方になって突然州政府から「やっぱり14日(月)と18日(金)も祝日にします。その代わり、2月の週末に出勤してください」と発表されたのです(インドでは州によって祝日が異なります)。私は1月14日(月)と18日(金)が平日である前提でスケジュールを立てており、取引先から資料を受け取る予定だったので、突然の祝日発表に困惑し、スケジュールの再調整に大変苦労しました。

私のようにギリギリのスケジュールを組んでしまった場合、不測の事態が発生した場合に再調整のためにかえって時間を要してしまう可能性があるので、インドでは常に余裕のあるスケジュールを組み、臨機応変に優先順位の見直しをすることが重要です。インドでは常に想定の斜め上を行く事態が発生するということを予め日本本社や関係取引先に理解してもらうことも重要です。

2. 優先順位付けを徹底する

インドでは、日本では考えられないような想定外の事態が常に発生します。例えば、弊社のような会計事務所では、政府による突然の規制変更や要求により大幅に業務量が左右されます。決算や税務申告で忙しい時期に新しい申告書の提出を要求されたりすると、一気に人員不足に陥ります。

インド政府は民間企業の負担を全く考えずに規制変更をする傾向があるため、日本の常識に従って100%完璧な対応をしようとするとキャパオーバーに陥って、結果的に重要な手続きをうっかり見逃してしまう事態さえ誘発します。極端な例ですが、税務申告で忙殺されている時期に突然税務署からの税務調査が入った場合、1ルピーの間違いも発生しないよう慎重に税務申告を行った結果、税務署からの理不尽な言いがかりに対して反論する根拠を集める暇がなくなり、数十万ルピーの追徴課税をされてしまっては本末転倒です。

このようにインドでは100%完璧を要求しすぎると組織の能力を超過する可能性があるので、前項で述べたようにスケジュールに余裕を持たせることが大切になります。しかしながら、余裕を持たせると余剰人員を抱えることになるため効率性の低下を意味し、コストが嵩むことになります。また、本社側のコンプライアンスによりスケジュールに余裕を持たせることができない場合もあるかと思います。そこで大切となるのが、スケジュールおよびタスクの重要性の優先順位付けを日本以上に徹底することです。

例えば、税務申告やその他細かい法令遵守などについては遅延が発生した場合のペナルティなどを調べ、影響度・重要度に応じてリスクを評価し、経営への影響が大きいものから優先的に対処することが大切です。経営への影響が低いと判断した場合には、場合によっては敢えてペナルティを支払うことをも許容し、社内スタッフに過度な負荷を掛け過ぎないように配慮するという「攻めのリスク管理」が必要となる場合もあります。上述の例の場合には、税務申告を遅らせて延滞税を支払うという僅少のコスト負担を買って出てでも、重要な税務調査対応により注力することが合理的な判断といえます。

3. スケジュール確認の徹底

 インド人は日本人とは時間に対する感覚が異なります。これは文化の違いであって、決して日本人の時間感覚がインド人より優れているわけではありません。インドでは様々な想定外の事態が発生するため日本のように時間をかけて緻密なスケジュールを組む価値が相対的に低いため、変化に対して柔軟に対応することがより大切になるからです。

日本本社が要求する時間軸でインド人スタッフに仕事をしてもらいたい場合には工夫が必要となります。 例えば、インド人スタッフが直前まで「納期までに終わる(No problem)」と言っていたにも拘らず無連絡で納期に遅れたり、事後になって「やっぱりできませんでした。なぜなら、、、」と延々と言い訳を聞かされるというケースは散見されます。

このような事態を防ぐためには、小さな業務に細分化してマイルストーン(小目標)を設定することが大切です。設定したマイルストーンに遅れそうな場合には頻繁にリマインドを行います。リモートワークではメッセージや電話に出ない場合もあるので、定期ミーティングなども必要に応じて設定します。リマインドをしすぎて関係が悪化することを心配されるかも知れませんが、インドでは一般的に主義主張をストレートに相手に伝えることについて比較的耐性は高く、例えば度々のリマインドをしたことが原因で仕事に対する意欲が低下したり、人間関係に傷がいくようなことは起きにくいと感じます(もちろん、相手のタイプやその人との関係性によるので相手のことをよく観察し、普段から信頼関係をつくっておくことは大切です)。それ以上に、リマインドを怠ることによる遅延リスクの方が大きいといえます。

リマインドをするときには感情的にならず淡々と行う必要がありますが、淡々とし過ぎると深刻さが伝わらず「遅れても構わないのだ」という誤解を与えてしまう場合もあるので、相手の様子を見つつバランスを取ることが必要になります。

マイルストーンに間に合わなかった場合、最終期限までに間に合うかどうかを判断し、最終納期に間に合わない場合には早めに対策を講じます。

執筆者紹介About the writter

木内  達哉
木内 達哉 | Tatsuya Kiuchi
東京大学経済学部卒。IT業界での営業職を経て、経営企画室にて予算管理や内部統制整備、法務コンプライアンス業務、また、財務経理部にて海外子会社の経理業務などを含む幅広い経営管理業務に約10年従事。2018年より南インドに移住し、インド会計・税務コンサルタントとして日系企業のインド進出を支援している。

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