Transaction Scheme & Cases

取引スキームや進出事例

H : 日系企業の典型的な取引スキームやインド進出事例

日系企業の典型的な取引スキームやインド進出事例

(文責:田中啓介 / Global Japan AAP Consulting Pvt. Ltd.)

1.在インド日系企業の概要

2019年10月時点で、インドには1,441社(5,102拠点)の日系企業が進出しています。進出企業を業種別で見ると自動車産業を中心とした製造業が約半数を占めており、その他商社やコンサル、金融などのサービス業も多数進出しています。特にここ数年で外資規制の緩和が進んでいることもあり、無印良品やユニクロなどの小売業、セブンイレブンのフランチャイズ契約やクレディセゾンのNBFC(ノンバンク金融事業会社)による進出、吉野家やCoCo壱番屋、亀田製菓などの飲食および食品関連分野、また、オンラインプログラミング学習サービスのProgateやアグリテックのSagriなどスタートアップの進出も増えており、進出分野やその形態において多様化が進んでいます。

ここでは日系企業においてよく見られる典型的な取引スキームの中で、注意すべき税務論点の全体像について簡単にご紹介をしたいと思います。各個別論点の詳細についてはそれぞれリンク先の個別ページをご覧ください。

2.親子間やグループ会社(関連者)間取引

まず大前提として、親子間やグループ会社間の取引については関連者間取引(Related party transactions)として移転価格税制に基づく取引価格の妥当性の評価が重要となります。当該関連者間取引の年間取引総額が1,000万ルピーを超える場合には、妥当な取引価格(独立企業間価格:Arm’s Length Price)を証する移転価格文書の作成・保管が必要となるためご留意ください。

E-28. ケース事例から見るインド移転価格税制の実務と税務リスク

3.日本からインドへのサービス輸入取引

技術支援や管理部門のサポート等を目的として、日本本社からインド現地法人へのサービス提供を実施しているような場合が多々あります。このような取引はインド現地法人の立ち上げ時期に比較的多く発生している傾向がありますが、その場合には当該人的役務提供の対価について、インドの所得税法上の「事業の開始日(Date of set-up/commencement of business)」の観点から、インド現地法人においてどのように会計処理および適切な文書化を実施し、かつ、税務申告を行うかが重要となります。また、GSTによるリバースチャージ課税(RCM : Reverse Charge Mechanism)やインドから日本への海外送金実務に対する理解も必要となります。

H-41: インドにおけるサービスおよび物品の輸入取引

4.日本からインドへの商品輸入取引

インド国内の販売代理店や、販売機能を有するインド現地法人を通じて、日本から商品を輸入・販売するケースも一般的な取引のひとつです。上述のGSTリバースチャージ課税と日本への海外送金実務に加えて、この場合の重要な税務論点のひとつに「代理人PE課税」があります。つまり、インド国内で販売に従事する者が、日本本社の代わりに契約にかかる交渉などを含む重要な役割を担っていたり、契約の締結に関わっていると見なされる場合には、該当者がインドに代理人PEを創出するとして、インド税務当局がPE課税権を主張する可能性があるため注意が必要となります。

H-43 : インドにおける代理人PEと課税リスク

5.経済特別区(SEZs)や保税倉庫(FTWZs)、保税製造施設などを活用した取引

日本からインドへ商品を輸入する場合には、インドにおいて輸入時に関税を支払うことなく商品を保管もしくは製造することが可能となる制度があります。つまり、経済特別区SEZs(Special Economic Zones)や保税倉庫(FTWZs : Free Trade Warehouse Zones)においては関税およびGSTが免税となっており、また、2019年10月から新たに導入された保税製造施設においては、場所を問わず、かつ、関税を支払わずに製造および一定のオペレーションを実施(保税製造:Bonded Manufacturing)することが可能となっています(※保税製造施設の場合は関税の免税ではなく、関税納付の繰延、つまり、インド国内販売時に関税納付)

H-48. インドの保税施設および保税制度について

6.インドから日本へのサービス輸出取引

インド現地法人がマーケティングや販売促進のための活動、インド市場調査レポート作成など、一定のサービスを日本(インド国外)に対して提供する場合に、当該サービスが税法IGST Act Section 2 (6)に規定される「サービスの輸出(Export of Service)」に該当するかどうか、つまり、当該取引が輸出免税の適用を受けることができるかどうかが重要な論点となります。輸出免税の適用を受ける場合には、課税年度ごとにインド税務当局からのLUT(Letter of Undertaking)を事前取得する必要があります。

H-42 : インドにおけるサービス輸出取引の実務

7.複数州および三国にまたがる仲介貿易

インド国内商社が他州より国内もしくは国外顧客へ商品を直送する「Bill to Ship to」取引スキームや、同様にインド国内商社がインド国外(例えば日本)からその他の第三国(例えばスリランカ)へ商品を直送する「Intermediary trade / off-shore trade」三国間貿易スキームなども多々見受けられます。この場合には取引スキームに必要となる書類の理解および取引先に対して開示される各種情報の管理対応、そして、GSTの課税関係(特に輸出の場合にはLUTに基づく非課税処理や還付申請実務、海外送金にかかる必要書類の整備など)において注意が必要です。

H-47. インド国内外における物品販売スキーム事例


取引スキームや進出事例

H-41 : インドにおけるサービスおよび物品の輸入取引

H-42 : インドにおけるサービスの輸出取引

H-43 : インドにおける代理人PEと課税リスク

H-44 : 単一ブランドによる小売取引(ユニクロの進出事例)

H-45 : フランチャイズ契約による小売取引(セブンイレブンの進出事例)

H-46 : NBFCライセンス取得に基づく金融取引(クレディセゾンの進出事例)

H-47 : インド国内外における物品販売スキーム事例

H-48 : インドの保税施設および保税制度について